永木三月のテイスティングログ: 本格イタリアンジェラート食べ比べの会(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第35回)

2016年7月15日金曜日

本格イタリアンジェラート食べ比べの会(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第35回)

本格イタリアンジェラート食べ比べの会!


7/9(土)、Okatteにしおぎにて本格イタリアンジェラート食べ比べの会」を開催しました。おいでくださった皆様、どうもありがとうございました。

今回エントリーしたのは
1. 新宿『プレミアム・マリオ・ジェラテリア』
2. 恵比寿『ジェラテリア・マルゲラ』
3. 広尾『アクアパッツァ・ジェラテリア』
4. 阿佐ヶ谷『シンチェリータ』
5. 祐天寺『ジェラテリア・アクオリーナ』

の5店です。


フレーバーは、お店の良さが出るものをベースに、食べ比べる事で興味深い違いが表れそうな(好対照な)お店に関しては、近い系統の素材で揃えました。
テイクアウトでの調達ということで、コンディションにはある程度バラつきがあります。その点はご了承ください。



レビュー

 

1. ジェラートの肝「食感と素材感」

イタリアの氷菓、ジェラートの特徴は、ひとえに素材の美味しさを直接味わえる事にあります。

アイスクリームと比べるとその違いは明確です。ジェラートは乳成分、空気の含有量が少ないため、滑らかなコクがあり素材の旨味が凝縮されているのです。

そうした意味では、1品目の『マリオ・ジェラテリア』のジェラートはあまり美味しいものではありませんでした。
ピスタチオとカシス、2つのフレーバーを選んだのですが、特にピスタチオはクリームのコクで素材の味がぼやけており、固形で入っているピスタチオで風味を補正しているのが目立ちました。

一方で、二品目の『ジェラテリア・マルゲラ』以降の品は、ジェラートならではのもっちりとした食感があります。とりわけ、5店目の『ジェラテリア・アクオリーナ』のジェラートは、コシとでも言うべき食感と滑らかさが両立しており、最も印象的でした。

また、ジェラートならではの素材感の強い味わいが、三品目以降顕著だったように思います。

特に三品目の『アクアパッツァ・ジェラテリア』のスイカのジェラートは、味の作り込みなどについてはそこまで高く評価できませんが、素材のジューシーさ、「種の周りのような」(会で出た感想で印象に残っている言葉を使わせて頂きました)風味の強さが印象的で、ジェラートならではの素材重視の一品でした。


2. 同フレーバー多店舗対決から見えてくる「味の一体感」

それぞれの味の完成度を分けていた原因に「味の一体感」がありました。

二店目のイタリア発のジェラート店『ジェラテリア・マルゲラ』と、四店目の日本発のお店『シンチェリータ』との比較で、特にそれが顕著だったように思います。今回購入したフレーバーではどちらも胡桃が固形で入っていたのですが、ジェラート自体との馴染み方、一体感が全く違いました。

マルゲラの方では、胡桃のサイズが大きく、ミルクメインとのフレーバーとの橋渡しをするものもなかったため、ただ胡桃がアクセントとして入っているだけになっていました。

一方でシンチェリータの方では、はちみつを使ったり、胡桃のサイズを小さくしたりと、ジェラート全体の食感や風味に一体感を持たせようという工夫が見られました。

ちなみに今回頂いた、シンチェリータの「メルノワ」(ローストしたくるみと蜂蜜)というフレーバーは、2011年のジェラート世界大会での入賞経験があるそうで、その触れ込みに違わず、非常に構成が練られた美味しいジェラートでした。


3. 王道の美味しさ『シンチェリータ』と、異色の魅力『ジェラテリア・アクオリーナ』

今回ご紹介したお店で、クオリティの高さで一二を争ったのが、4店目の『シンチェリータ』と5店目の『ジェラテリア・アクオリーナ』です。どちらがより美味しいかは、参加された方の中でも意見が分かれました。

シンチェリータの一番の特徴は、甘さが抑えられていて、直接的な刺激に頼らない作りになっていることです。それによって味がだれる事なく、使っている素材の良さがまっすぐ綺麗に表現されています。

一方で、先ほど食感に関しても触れた5店目の『ジェラテリア・アクオリーナ』は、クオリティでは『シンチェリータ』と大きな差はありませんが、味の方向性が異なります。

今回頂いたフレーバーは、「トルタ・アルビコッカ」というもので、リコッタチーズのジェラートに、アプリコットのソースと、杏仁風味の焼き菓子を合わせたものでした。

特徴的なのは、お酒の風味が強く、甘さにつやとボリュームがあること、また、アプリコットの濃厚な風味が利いて、必ずしも万人受けのしないアクのある味わいになっている事です。

『シンチェリータ』が、素材にこだわりその良さをストレートに表現しているとすれば、『アクオリーナ』はそうした素材を組み合わせることで、味のグラデーションとでも言うべき複雑さ、混合感を作っており、その点で両者の美味しさは方向性を異にしているのです。

出自を見れば、『アクオリーナ』の方はジェラート一筋ではなく、レストラン修行での経験を経ている点でかなり異色です。こうした出自は、他店と味のアプローチが異なっている事と無関係ではないでしょう。



終わりに

ジェラートという食べ物はそれほどかしこまったものではないため、『アクオリーナ』のジェラートのような創作性や緊張度の高さは、ジェラートファンから敬遠されてもおかしくはありません。

その意味で、今回食べ比べた中では『シンチェリータ』が、いわゆる「ジェラート」としてポピュラーで、かつ上質な味になっていたように思います。

私個人としては、
王道のジェラートとして『シンチェリータ』
新たな美味しさに出会いたい方に『ジェラテリア・アクオリーナ』
をお勧めいたします。

今回のレビューで気になった方は、ぜひ実際にお店に足を運んでみてください! 会に参加してくださった方も、直接店舗に足を運んでみると、新たな発見に出会えるかもしれません。


今後のイベント開催について

食べ比べをテーマにした味覚鑑賞会は、毎月2回程度、都内各所、高級品から普段使いの製品まで、様々なテーマで開催中です。その他、グルメをテーマにした様々なイベントを開催中です。

直近では7/19(火)に、コラボ企画として、イベント駆動型シェアハウス『浅草橋ブレッドボード』の毎週恒例「カレー会」の枠をお借りして、本格的な南インドのカレーと、ワイン案内人のMinami Hoashiさんにセレクトして頂いたワインを食べ合わせる会を開催いたします。新たな味わいに触れてみたい方はぜひ!

7/23(土)には、長野県は塩尻「nanoda」にて、出張シェフをやらせていただきます。信州のシェアハウス『塩尻ブレッドボード』の主催するカレー会にて、管理人の高田 正哉さんと南インドのカレー「ミールス」を、19日に引き続き、オールベジで作ります。こちらも折が合えばぜひいらしてください!

今後の予定

7/19(火)スペシャルカレー会 ~南インドの定食「ミールス」×ワインの会~@浅草橋ブレッドボード(20:00~)
7/23(土)nanodaカレー会@長野県塩尻(カレー担当)
7/30(土)「ワインのきほん」~赤ワインぶどうの品種を知ろう~@荻窪某所(18:00~)

今回いらしてくださった皆様、本当にありがとうございました。興味あったけど予定が合わなかった……という方は、次の機会にいらしてくださると、とても嬉しいです。
次回も美味しい会をみなさまにお届けします。それではまた!

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