永木三月のテイスティングログ: 乾燥パスタ6種食べ比べ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第38回)

2017年5月13日土曜日

乾燥パスタ6種食べ比べ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第38回)

乾燥パスタ6種食べ比べ!

4/29(土)浅草橋のシェアハウス『浅草橋ブレッドボード』にて「乾燥パスタ6種食べ比べの会」を開催しました。おいでくださった皆様、どうもありがとうございました。

エントリーしたのは 
1. ママー 1.6mm(日本/1955年/200円) 
2. De Checo 1.6mm(1886年/アブルッツォ州/300円) 
3. Divella 1.55mm(1890年/プーリア州/270円) 
4. Rustichella d’abruzzo 1.7mm(1924年/アブルッツォ州/600円) 
5. Mancini 1.8mm(1970年/マルケ州/800円) 
6. Faella 1.5mm(1907年/カンパニア州/900円) 
以上の6ブランド。



今回は、ブランド間の比較をテーマに、国産とイタリア産合わせて6種の食べ比べを行いました。「マ・マー」以外は全てイタリア産です。形状はスパゲッティよりも少し細めのロングパスタ「スパゲッティーニ」で統一しましたが、若干太さにはばらつきがあります。

茹で方はアルデンテで、お湯1Lに対して10gの塩で茹でています。パッケージの茹で時間表記は必ずしも守っていませんが、その点はご了承ください。 

レビュー

1. パスタの味その1 〜 質感 〜 


パスタの味を決める変数はいくつかありますが、今回の食べ比べで浮き彫りになった(注目した)のは、ブランドごとの製法と素材の違いです。 

製法では
・成型に使うダイス(型)の材質(ブロンズorテフロン) 
・乾燥の方法(低温長時間~高温短時間)
 の2つが、味をわける主な要素です。この2つについては茹でる前にパスタを観察することでも、その違いを見分ける事ができます。 

型の違いは表面の質感に出ます。ざらざらしていればブロンズ製、つるつるならテフロン製です。ブロンズを使うのがより伝統的な製法なのですが、摩耗が激しいためコストがかかるそうです。大量生産のパスタにはもっぱらテフロンが使われています。

また、ブロンズの方が、表面に凹凸があるためソースの絡み(馴染み)が良いです。テフロンは表面に凹凸がないので、ソースは相対的に馴染みにくいですが、滑らかでつるつるとした舌触りが得られます。

今回は、国産の『マ・マー』、イタリアの『Divella』『Faella』がテフロン、その他がブロンズでしたが、『Divella』『Faella』ではパスタによって使う型の材質を変えているそうです。 表面の質感、ソースの馴染み方は、製法との密接な関係が食べていてもよくわかりました。 

また茹でている際、ブロンズダイスのものの方が、表面の粘り気が強く出て、アルデンテの状態が保たれる時間が短く感じられます。 
これは、麺の表面積の違いによって、デンプンが水に溶けるスピードが変わることによるようです。ソースの馴染みやすさも同じ理由です。 


2. パスタの味その2 〜 乾燥の方法 〜


製法のもう1つの要素「乾燥方法」は小麦の風味に関わります。見た目ではパスタの色味に出ます。

乾燥方法は、大きく分けて低温長時間と高温短時間の2つです。元々乾燥パスタは天日干しで作っていたものなので、低温長時間乾燥の方がより伝統的な製法に忠実だと言えます。 

高温の場合、タンパク質がカラメル化し、元々の小麦の風味とは異なるものとなり、弾力(茹でたときのもちもちとした食感)が失われます。色は黄色味を帯びた物になります。 
低温の場合は、元々の小麦の風味を保ったままで、弾力も保たれます。 高温短時間の方が管理が容易なのもあって大量生産に向いています。 

今回食べた中では、「マ・マー」が高温短時間乾燥、「Divella」が中温中時間乾燥だそうです。 実際、「マ・マー」は食感にもちもちとした弾力はほとんどなく、口の中に広がる風味も非常に弱いです。 

中温中時間をうたう「Divella」は、しこしことして歯切れの良い食感で、「マ・マー」や、低温長時間ではポピュラーなラインナップである「De Checo」に比べても、小麦の香りは強く感じられますが、他のものに比べて香ばしい風味になっています。 


3. その他の違い(原料、ブランド毎のコンセプト)

今回頂いた中でとりわけ美味しかったのは、自社小麦100%でパスタ作りをしている「Mancini」と、ナポリの老舗高級パスタブランド「Faella」でした。 

「Mancini」は、マルケ州というイタリアの小麦の一大産地として知られる土地にあるメーカーで、元々は小麦農家だったそうです。 パスタの原料であるデュラム小麦にもいろいろな品種があるそうなのですが、その中の特定の品種2つをブレンドして使っているメーカーです。 

ブロンズダイス特有のざらざらとした質感と、低温長時間特有の豊かな小麦の風味があるのはもちろんなのですが、同じ製法である「De Checo」と比べると、風味が伸び伸びと長く続き、味わいが深いです。また同じく風味の豊かな「Rustichella d’abruzzo」と比較すると、味わいに抑制があり上品です。料理の1パーツとしての魅力だけでなく、単品での味わいの完成度が魅力的なパスタです。 

もう1つのお勧めはナポリの老舗高級パスタ「Faella」です。 パスタ発祥の地で生まれたそうで、こちらも伝統的な製法を固持しているメーカーの一つです。 

こちらは、ロングパスタではほとんどテフロンダイスを使って表面をつるつるに仕上げるのですが、ショートパスタではブロンズダイスを使用しているそうです。 

「Faella」の魅力は、小麦の風味、質感、コシなどそれぞれの要素が一体となって味を作っているところで、「Mancini」の味わい深さとは少し違った美味しさです。

「Mancini」が耳を傾けてじっくり味わう繊細な美味しさだとすれば、「Faella」はより肉感的で力強い美味しさのように感じます。 製法では、乾燥にかける時間が他のメーカーに比べても段違いに長く、1週間程かけてじっくり乾燥させているそうです。

「Mancini」が80~90時間、「De Checo」が長い物で36時間、「Rustichella d’abruzzo」が30〜60時間とのことなので、ダントツに長い事がわかると思います。 


終わりに



いかがでしたでしょうか。 ロングパスタオンリー、6メーカーと、かなり的を絞った食べ比べだったので、その違いがよくわかる食べ比べになったかと思っています。お楽しみいただけていれば嬉しいです。 

乾燥パスタだけでも、他に様々なメーカー、形状のパスタがあるので、そちらも食べ比べできる機会を作れればと今から画策しています。お楽しみに! 

今回の料理とワイン

食べ比べ後には、恒例の食事の部を開催。 お勧めした「Faella」「Mancini」をそれぞれ、ナポリ風のズッキーニのソースと、ホタテやイカ墨を使った魚介ラグーソースと合わせました。 

また、今回はワイン案内人として活動されているMinamiさんに、料理に合わせたお楽しみワインを赤白一本ずつ選んで頂きました。 


白ワイン(画像右)は、ヴィオニエという葡萄を使った、アメリカのカリフォルニア州で作られているもので、「Faella」のスパゲッティーニを使ったズッキーニのパスタに合わせました。野菜の青い香りや小麦の香りと相性抜群でした。

赤ワイン(左)は、シラーという葡萄を使った、南オーストラリアのワインで、「Mancini」のスパゲッティーニを使ったイカ墨ラグーソースに合わせました。
すり身にした魚介の甘くコクのある味わいを、スパイシーで軽やかな味わいで見事に補完する、素晴らしい組み合わせでした。

料理にぴったりのワインをセレクトしていただいたワイン案内人のMinamiさん、ありがとうございました。食事の部もお楽しみいただけていれば嬉しいです。


今後のイベント開催について

食べ比べをテーマにした味覚鑑賞会は、月1回を目処に、都内各所、高級品から普段使いの製品まで、様々なテーマで開催中です。
その他、グルメをテーマにした様々なイベントも常時開催しています。 

直近では
5/27(土)18時〜 ブルーチーズ食べ比べの会@浅草橋ブレッドボード(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第39回) 
を予定しています。参加受付間もなく開始いたします。ご興味ある方はぜひ! 

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