永木三月のテイスティングログ: EXバージンオリーブオイル7種をテイスティング! 「おいしいもの味覚鑑賞会」第27回

2016年1月26日火曜日

EXバージンオリーブオイル7種をテイスティング! 「おいしいもの味覚鑑賞会」第27回

 話題のEXバージンオリーブオイル7種をテイスティング!

11/29(日)夜、シェアハウス『浅草橋ブレッドボード』にて、食べ比べをテーマにした会おいしいもの味覚鑑賞会」を開催しました。  
今回で27回目の開催になります。ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。主催の永木三月です。  

今回のテーマは『オリーブオイル』。地中海沿岸を中心として、非常に長い歴史のある食品です。  
今回はオリーブオイルの中でも、「エクストラバージンオリーブオイル」というカテゴリに入るものを中心に5種類を選びました。世界でもメジャーな産地であるイタリアスペインはもちろん、中東はレバノンのオリーブオイルという変わり種もあります。また、スペインのオリーブオイルの一つは、オリーブの品種別の詰め合わせになっており、そちらの比較が会のサブテーマとなっています。    


〈目次〉(★=格別美味、◯=次点。)    

1.『肉のハナマサ』ポマースオリーブオイル 
2.イタリア『BOSCO』 
3.イタリア『SANTERAMO』 
4.スペイン『El Labrador』(ゴルダリージャ、ピコリモン、アルベキーナの3種) 
5.レバノン『FUADO’S HARVEST』 
6.スペイン『Rincon de Subbetica』  




レビュー


1.『肉のハナマサ』ポマースオリーブオイル(1058円/2000ml) 


1品目は、業務用スーパー『肉のハナマサ』ブランドのオリーブオイル。 
味わいは、どろっとしたべたつきがあり、おいしいとは言いがたい品です。驚くほどオリーブの風味がなく、香りも希薄。オリーブオイルという名前がついていなければそれとはわからないでしょう。  

それもそのはず、ポマースというのはオリーブの搾りかすの事で、ポマースオリーブオイルは、風味が出切ってしまったものからオイルを出して精製したもの。 表示の偽装などがあるわけではなく、パッケージや値段からおおよその味は想像がつくものの、オリーブオイルに関する知識がなければどのようなものかはわからないでしょう。

他の食品で言えば、バターに対するマーガリンに近い存在と言えるかもしれません。   


2.イタリア『BOSCO』(184円/50g)  


2品目は、日本で最も高いシェアを誇る『BOSCO』
なお、この品以降は全てエクストラバージンオリーブオイルです。  

『肉のハナマサ』のオリーブオイルとは反対に、香り味わい共にオリーブオイルらしさをすぐに感じます。 一方で、「オリーブらしさ」が強調され過ぎている嫌いがあり、けばけばしい印象も受けます。  

会の中では、3品目以降と比較した際に、このオリーブオイルの不自然さを指摘する声が多く聞かれました。 

「エクストラバージンオリーブオイル」という名前を名乗る事には、日本では特に規則がないため、品質を判断する基準にはあまりならないという話も聞きます。オリーブオイルの本場であるイタリアなどでも、エクストラバージンの品質偽装は甚だしいそうです。 

BOSCOが日本で最大手ということは、多くの人がその味をオリーブオイルの基準としていることになりますが、それにふさわしい味わいなのかについては疑問が残るところです。   


3.イタリア『SANTERAMO』グリーンラベル(約1200円/250ml)  


3品目は、イタリアの『SANTERAMO』。 
本格的なオリーブオイルとして最もメジャーなものの1つでしょう。スーパーでも、少し高めのオイルとして置かれているのをよく見かけます。ちなみに会の参加者の中にも愛用されている方がいました。  

その味わいは格別洗練されたものではありませんが、BOSCOのものと比べて奥行きがあり、口当たりも軽いです。香りも爽やかでした。 
癖がないので、サラダのドレッシング、パスタの仕上げなど、多くのシーンで活躍できるオリーブオイルです。  

BOSCOのところで触れた「オリーブオイルの基準」という話に絡めて言えば、今回頂いたもので、標準的な深み、品を備えていたのが、こちらのオイルでした。   


4.スペイン『El Labrador』(1944円/計120ml)  


4品目は、スペインの『El Labrador』。創業250年の老舗だそうです。今回頂いたものの中では唯一、単一品種のオリーブオイルです。ゴルダリージャ/ピコリモン/アルベキーナという3種のオリーブから作られたオイルを比較しました。  

・ゴルダリージャ 
まずはゴルダリージャ。若いうちに摘むことで美味しいオリーブオイルができる品種で、『El Labrador』が独自に開発してきたものだそうです。 味わいは、青く若々しい香りが特徴的。味はさらっと軽いですが、オイル自体はやや粘度を感じ、後味には少し辛みもあります。まっさらなキャンバスの上に書かれたように、風味がクリアに抽出されていて、サンテラモに比べて純粋で繊細です。 若い植物を思わせる香りとあって、今回用意した食材の中では、葉野菜のサラダ、生のトマトと抜群の相性でした。  

・ピコリモン 
次に頂いたのはピコリモン。スペイン南部のアンダルシア地方で採れる希少な品種で、そのまま実を食べても非常に美味しいそうです。
若々しさはあまりなく、少し香ばしさ、苦みを含んだコクを感じます。喉を刺激するピリピリとしたスパイシーさが特徴的。 コクがあるので、豚肉やベーコンのソテー等、パワーのあるものと合わせることで風味が活きます。  

・アルベキーナ 
品種比較の最後はアルベキーナ。スペイン北部を原産とし、オイル用品種としてよく使われています。 
ほのかに感じる唐辛子のような辛さと、ジューシーな味わいが特徴的。 
会の中では、バゲットや豆腐などと相性が良いと意見がありました。単一品種なのですが、他2つと比べて尖ったキャラクターがなく、食材とよく馴染む味わいが面白い一品でした。  

・総評 
単一品種というだけあって、それぞれの特徴が切り取られて表現されている印象がありました。要素が削ぎ落とされている分、食材との相性も考えやすいです。ピュアで繊細なオリーブオイルです。    


5.レバノン『FUADO’S HARVEST』(1500円/120ml) 


5品目は、レバノン産の無濾過のオリーブオイル。レバノンは、紀元前4000年には既にオリーブが作られており、今でも日々の食事に欠かせないのだそうです。  

香りには、ライムのような柑橘系の爽やかさと、やや香ばしい豆のような匂いがあります。無濾過という事もあって少しざらついた舌触りで、喉にヒリヒリとした辛さを感じます。まさにオリーブを丸ごとオイルにしたような雑味の多さが印象的で、フレッシュで素朴な味わいです。味わいの剪定を感じない点で『El Labrador』とは対照的です。  

相性では、まさにこれ、という食材はなさそうな印象でしたが、ジャガイモとの相性が良いのではという意見がありました。ざらついた風味を活かした、素朴な味わいのマッチングをお勧めします。   


6.スペイン『Rincon de Subbetica』(3800円/250ml)  


最後は、スペインの『Rincon de Subbetica』。2013年に「OLIVE JAPAN」という大会で最優秀賞を取ったオイルの一つだそうです。  

香りには、青林檎のようなフルーティさと、フローラルな甘い香り、柑橘系の爽やかさを感じます。 口当たりは水のようにクリアで軽く、青いトマトのようなジューシーさもあります。ナッツのような苦味とフレッシュな辛みが味わいの奥の方に感じられ、非常に空間的できれいな味わいです。  

今回頂いたものの中で、味わいの繊細さ、綺麗さが最も優れていたのがこのオリーブオイルでした。何もつけずに頂くと、味が口の中で展開していく様がくっきりと表れ、オリーブオイルの個性をしっかり感じ取る事ができます。   


最後に 



今回取り上げたオリーブオイルのほとんどはエクストラバージンオリーブオイルでしたが、一口にオリーブオイルと言っても、その基準は様々です。  

まず、オリーブオイルをそのまま搾った「ヴァージンオリーブオイル」、次に、そのままでは食用に適さないヴァージンオリーブオイルを精製した「精製オリーブオイル」(非食用)、最後にヴァージンオリーブオイルと精製オリーブオイルをブレンドして食用に作った「ピュアオリーブオイル」の3つがあります。  

今回主に頂いた「エクストラバージンオリーブオイル」は、「ヴァージンオリーブオイル」の中で最も優れたもので、専門家によるテイスティング審査によって、欠陥が全くなく、フルーティな風味を持つと判断されたものを指します。  

レビューの中でも書いたように、残念ながら日本ではそうした等級の表示に関する厳格な決まりがありません。普通のオリーブオイルにエクストラバージンの名を冠するなどの品質表示の偽装は、日本に限らず世界中で横行しているそうです。  

身近な例として日本でのオリーブオイルについて考えてみましょう。日本ではオリーブオイルを食してきた歴史が短いため、オリーブオイルの味が本来どのようなものなのか、その名前にどのような意味があるのかを知っている人がごく僅かしかいません。
  
今回頂いた美味しいオイルの全てに、辛みや苦味といった、普通であればネガティブに感じられる味わいがあり、それこそがオリーブオイルの旨味だと思うのですが、日本ではそうした認識は必ずしも一般的なものではないようです。  

また、美味しいオイルは高いため、それだけ人々が口にする機会も限られたものになります。結局、オリーブオイルの真価はまだまだ多くの人にとって知られざるものだというのが現状なのだと推測できます。  

今回会の中で質問が多かった国産オリーブオイルについても書いておきます。日本国内で生産している地域は僅かで、最も有名な産地は小豆島だそうです。コンクールで入賞した国産のオリーブオイルを見ても、小豆島、及び香川のものがほとんどです。  

日本のオリーブオイル作りの歴史はおよそ100年ほどと短く、生産技術が確立し出したのも、ここ20年くらいのことです。生産量は少なく、相対的に高額なものが多いですが、きちんと香り高く美味しいものも、一部では出回っています。  

オリーブは、日照時間が長く温暖で、雨が適度に降る地域であれば栽培が可能なため、最もポピュラーな産地である地中海沿岸以外にも、南米、オーストラリアなど、様々な地域で生産されています。 今回頂いた中で地域差を感じたのがレバノンのオイルで、イタリアやスペインのオイルとかなり毛色が違っており、良い意味で雑味がある味わいが面白かったです。  

なお、日本では最高等級であるエクストラバージンオイルばかりが珍重されがちですが、場所によっては、それより低い等級の雑味ある味わいを良しとする文化もあるそうです。同じオリーブオイルの中で、エリア毎のカラーを比べてみるのも面白いかもしれません。 
  

オリーブオイルのテイスティングについて

当日は紙コップを使って、思い思いに計8種類をテイスティングしたのですが、今回取った方法はオフィシャルなものではありません。専門家と同じ方法を取る必要は必ずしもないのですが、紙コップの匂いがオイルの香りをマスクしてしまった面があったことなど、いくつか反省点がありました。  

酒類などと同じく、オリーブオイルにも品質評価のプロが行うオフィシャルなテイスティング法があるそうなので、載せておきます。これからオリーブオイルをテイスティングしてみたいという方は、ぜひ参考にしてみてください!(参考)
 

「準備するもの」
 オリーブオイル15ml前後を入れたグラス(温度は28℃前後が望ましい。時計皿で蓋をしておく)        
 テイスティング用のメモとペン        
 林檎のスライス、ラスク、常温の水、炭酸水など(味覚のリセット用)        
 オイル等を吐き出すための紙コップ  

「テイスティング」 
1.グラスを傾け、内側をオイルで湿らせる 
2.深く息を吸い込み、30秒ほどで香りを楽しむ 
3.オイルを3mlほど口に含む。口と舌の前部から、その脇、舌の奥、喉と、口の各部に満遍なくオイルを伝わせる。口から短く息を連続して吸い込むと、鼻の奥で香りをよりよく味わう事ができる。   

「評価について」 
品質の欠陥を示す尺度は多く、発酵臭、汚泥臭、ビネガー臭、焦げ臭、べたつき、金属臭などがあります。 
ポジティブな属性として表現されるのは、フルーティさ、苦味、辛み、全体のバランスの良さです。  

「エクストラバージンオリーブオイル」の名前を冠するためには、これら一つ一つの欠陥がないこと、そしてフルーティな香りがあることを、テイスターによって認められなければなりません。  

食べ比べの会で最後に頂いた『Rincon de Subbetica』のパッケージにテイスティングノートが載っていましたので、テイスティングをしてみたい方は参考にどうぞ。ワインソムリエのような語彙の幅広さに驚きます。

香り: 非常に凝縮感のある緑の果実の香り。複数の層が、素晴らしい複雑さを見せている。フルーツやシトラスの木を思わせる香り。タイムやミントのようなハーバルな香り。トマトの低木のような庭野菜の香りが特徴的。

味わい: 口当たりは、甘く、グリーンアーモンドのよう、苦く強すぎない程度にスパイシー。奥行きがあり、口にした者を長く引きつける魅力のある味わい。  


次回の予定


「おいしいもの味覚鑑賞会」は月一回を目安に開催しています。   
これを見て興味をもった方、今回は都合が合わなかった方、普段から食べるのが好きな方、いつもはコンビニで済ませてしまう方、どんな方でも大歓迎です。おいしいものを食べて、一緒に語らってみませんか?      

次回の開催は2/7(日)。 テーマは、近年躍進目覚ましいという国産ワインを予定しています!  

このサイトでは、美味しいレシピ、お店の紹介や食べ比べの実践など、「テイスティング」をテーマに記事をお届けしています。そちらもよろしければ見ていってください。それではまた!

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