日本の海塩を7種類テイスティング!
3/26(土)夜、シェアハウス『浅草橋ブレッドボード』にて、「テイスティングの味覚鑑賞会」を開催しました。
今回で30回目の開催になります。ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。テイスティング専門家の永木三月です。
テーマは『国産の海塩』です。日本全国津々浦々の塩20種近くを塩専門店でテイスティング、それぞれ個性の異なる塩をピックアップしました。
〈目次〉(★=格別美味、◯=次点。)
1.愛媛『伯方の塩』
○2.新潟『塩の花』
3.沖縄『うるわしの花塩』
4.兵庫『淡路島の藻塩』
5.沖縄『あっちゃんの塩』
6.三重『岩戸の塩』
★7.長崎『壱岐の塩』
レビュー
1.愛媛『伯方の塩』
まず『伯方の塩』。海水を天日干しして作った塩がメキシコから輸入され、そこから不純物を取り除くプロセスを経ることで作られます。つまり、日本のメーカーが作っている塩ですが、厳密には国産ではありません。
味わいは、いわゆる塩辛さがダイレクトにあり、後味に少しだけ甘みがありますが、基本的には味は塩辛さ一辺倒です。日本人が口にする平均的な塩ですが、他の自然塩と比べて味が直線的で、ディテールの豊かさには欠けます。
2.新潟『塩の花』(+日本酒)
次は、新潟『塩の花』。新潟には「笹川流れ」という綺麗な海岸の名所があるのですが、そちらで採られた海水を煮出し、大きな結晶の状態で取り出した塩が『塩の花』です。
頂いた中では、粒が最も大きい物でした。クリスピーな食感と、コクのある塩気以外に突出した所はありませんが、味の膨らみや後味など、隙なく厚みがあり、アンバランスなところのない塩です。
おにぎりや、焼き魚、サラダのアクセントなど、様々な食材と合わせても違和感が出づらく、使いやすいです。
この日の日本酒が、長野『小布施ワイナリー』が手がける特殊な日本酒だったこともあり、相性の良さは感じられませんでしたが、コクや辛みのある純米酒などとは相性が良いでしょう。
3.沖縄『うるわしの花塩』(+豆腐)
3つ目は、沖縄『うるわしの花塩』。沖縄は北谷の『ちゃたんの塩』をベースに、サンゴから取れるカルシウムを配合した塩です。
粒が非常に小さく、舌の上でとけるような繊細な食感が特徴的。少し苦味の伴うクリーミーさがあり、それが豆腐や豆の苦味と非常によく合います。
会では、豆腐を塩漬けにしたものと、豆腐にそのまま付けて合わせたものと、2つの形式で頂きました。
豆腐の苦味、クリーミーさと綺麗にマッチした味わいでした。
4.兵庫『淡路島の藻塩』(+鰹のたたき)
4つ目は、兵庫『淡路島の藻塩』。
一般的に藻塩は、海藻を海水に浸した後に取り出して乾燥させるという工程を何度も繰り返す事で、海水の塩分濃度を高め、その海水を加熱して水分を飛ばす事で精製する塩です。
ただし、こちらの藻塩は無色透明。その理由は、海藻を焼いて灰にした物を海水に浸水させ、それを濾過させることで海藻の成分を水に溶かすという手法をとっているからだそうです。
味わいは、口当たりに強めの塩気がありますが、持続はありません。少し海苔のような風味と、焼き魚の後味のような苦味が味の後半に感じられるところが特徴的。香りは良いですが、甘みはあまり感じません。
会では鰹のたたきと合わせましたが、案の定、魚との相性は抜群でした。
5.沖縄『あっちゃんの塩』(+キャベツとじゃこと海苔のサラダ)
5つ目は沖縄『あっちゃんの塩』。
平釜で煮詰めて、天日干しする方法で作っています。
ミネラル分が豊富だそうで、実際に成分を見ても、カルシウム、カリウムの量共に他の塩に比べて多めです。
じゃりっとした食感が特徴的で、少し辛さも感じるくらい強い塩です。後味に向かって主張の強さは収まり、野菜との相性の良さを感じさせる、苦味、甘みが広がります。塩単独の味としてはやや粗さも感じます。
会で合わせた物は、春キャベツとジャコ、海苔とごま油のサラダ。キャベツやホウレンソウなど、葉物野菜の甘みや苦味とよくマッチします。
6.三重『岩戸の塩』(砂肝の唐揚げ)
6つ目は三重『岩戸の塩』。
海水を加熱する際の燃料に薪を使用すること、鉄の平釜を使う事、にがり成分を残したまま焼き切るなど、随所にこだわりが伺える塩です。にがりの主成分であるマグネシウムを焼くことで、酸素と触れる事でアルカリ性に変化し、甘みが出てくるのだそうです。
味わいは、最初のインパクトが強く、ヒリヒリと焼け付くような辛さが特徴的です。
やや鉄錆のようで癖が強いです。一方で塩気はあまり強くなく、それほどコクがあるタイプではありません。口当たりに対して、後味の印象が薄いことにギャップを感じます。
会では、砂肝の唐揚げの下味とつけ塩として使いました。鉄錆のような風味は、思ったよりは食材の風味を妨げませんでしたが、合わせる食材は選ぶタイプの塩でしょう。内蔵系の食材とは相性が良いように感じました。
7.長崎『壱岐の塩』
最後は長崎から『壱岐の塩』。会の参加者の方が持ってきてくださった物で、7品目として急遽エントリーしました。
味わいは、口当たりに感じる塩気に抑えがきいていて、煮出した緑茶のような苦味があります。あまり苦味の強い食材とは合わないでしょう。一度、お茶漬けの塩として使いましたが、お茶の苦味が際立ってしまいました。個性の強い塩ほど、使い処を選ぶということの良い例でしょう。
口当たりに感じる抑制と、味の展開が面白い塩です。
カルシウムが多めな事以外は成分に際立った特徴があるわけでもないのですが、頂いた中では単独の味わいが最もきれいな塩で、味に組み立てと抑えがある美味しい塩でした。
終わりに
日本は岩塩や湖塩がありません。
そのため、古来から海水を使って塩を精製してきました。
海に囲まれていれば塩が豊富に入手できるかというと、必ずしもそうではありません。日本の場合、雨が多く湿度が高い事、広く拓けた土地が確保しづらかったことから、天日干しで塩を作るのではなく、海水を濃縮して効率よく塩を精製する方法が発達してきたそうです。
その原始的なモデルの一つが、今回頂いた塩の一つ、藻塩です。これは海水を吸わせた海藻を乾かすことで水分を飛ばし、表面に析出した塩を海水と合わせる事で、濃度の高い海水を作り出します。このプロセスによって、多くの塩を効率よく採取していたようです。 藻塩の風味を私たちは独特なものだと感じますが、あの磯の香りは、こうした必要から生じた副産物なのです。
今は、塩を入手すること自体はそれほど困難ではなく、純粋な塩化ナトリウム(精製塩)を得られるようになってはいます。自然から採取される塩はミネラル(マグネシウム、カリウム、カルシウムなどの金属)を多く含んでいるため、今回味わったような、甘み、苦味、酸味、特有の風味などを塩毎の個性として持っている訳ですが、現代の一般的な塩である精製塩からはそうしたものが取り除かれてしまっています。
食卓塩は、ただ塩っぱさが刺激としてあるだけで、とても素っ気ない味です。美味しくない上に、栄養的にもミネラルを含んだ自然塩に比べて劣っていますが、大量に安く作れるというメリットがあるため、一般的な塩として出回っているのです。
今回たべたようなミネラル豊富な自然塩は、どれも取れた場所や製法ならではの個性がありました。昔ながらの製法で作られたミネラルの豊富な塩は、最早ある種の贅沢品ですが、素材の味を引き立てる豊かな味わいはとても素晴らしいものです。
お気に入りの料理にぴったりの塩を、この機会に一つ常備してみてはいかがでしょうか。
美味しい塩はどこで買えるの?
都内では、麻布十番とスカイツリーの「塩屋 まーすやー」、戸越銀座の「Solco」が有名です。どちらのお店も、日本に限らず世界中の塩が購入可能で、その全てを試食することができます。
今回塩を購入したのは、麻布十番の「塩屋 まーすやー」です。沖縄、横浜、大阪にも店舗があります。
塩ソムリエの方がテイスティングの案内をしてくれるため、お気に入りの味わいを探したり、塩の味わい方を教えてもらったりと、塩の楽しみを満喫することのできるお店です。
海外の塩では、綺麗な結晶のような塩気を持つ「死海の塩」、上品さ際立つ中国の「宮廷塩」、温泉卵の匂いがあるヒマラヤの「ナマック岩塩」が印象に残っています。
塩の旅を体験してみたい方は、塩の専門店にぜひ!
次回の予定
「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」は月1回を目安に開催しています。
これを見て興味をもった方、今回は都合が合わなかった方、普段から食べるのが好きな方、いつもはコンビニで済ませてしまう方、どんな方でも大歓迎です。おいしいものを食べて、一緒に語らってみませんか?
今後の開催予定は、5月以降になります。
もしかしたら、レシピ研究会など、少し毛色の違った企画になるかもしれません。
ご興味のある方は、ぜひ!
このサイトでは「テイスティング」を軸にレシピやお店などの比較をテーマにした記事をお届けしています。 そちらもよろしければ見ていってください。それではまた!
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