永木三月のテイスティングログ: スパイス香り比べ&ビリヤニ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第37回)

2017年1月26日木曜日

スパイス香り比べ&ビリヤニ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第37回)

スパイス香り比べ&ビリヤニ!

1/14(土)、浅草橋ブレッドボードにて「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」を開催しました。おいでくださった皆様、どうもありがとうございました。   

今回のテーマは「スパイス香り比べ&ビリヤニ」です。
南インドのスパイスの名産地、ムンナールから持ち帰ったスパイスを含め、4種、4ブランドでの香り比べをしました。   



今回エントリーしたのは    
A.朝岡スパイス 
●B.GABAN 
★C.インド現地で仕入れたスパイス   
D.大津屋 
の4ブランド。(★が特に優れた品、●が次点です。)   


スパイスは
1.    シナモン(右奥)
2.    カルダモン(右手前)
3.    フェンネル(左手前)
4.    黒こしょう(左奥)
の4種をブラインドで(メーカー名を伏せて)香りのテイスティングをしました。 

また、風味がわかりやすいように、スパイスは粗く砕いています。フェンネルは食後に頂く定番スパイスということで、味比べもしています。    


レビュー 

A.朝岡スパイス 


まずは朝岡スパイス。百貨店や高級スーパーの香辛料コーナーによく置いてあるブランドです。世界中の香辛料を網羅していて、他では手に入らないスパイスも多いです。ミックススパイスも取り揃えています。創業は1981年。

香りを比べてみるとわかりますが、品質はあまりよいとは言えません。特にシナモンは香りの弱さが顕著です。  

香辛料は湿気等に弱く、保存に気を使う食材なのですが、一部のスパイスは包装が簡易すぎるという問題もあります(上で挙げたシナモンは、容器が柔らかいプラスチックです。ブラックペッパーの包装もかなり簡易です)。  

売っている場所を見るに高級路線のようですが,内実が伴っているとは言い難いところがあります。全ての香辛料を試したわけではありませんが、今回のスパイスを見る限りはお勧めできないブランドです。  


●B. GABAN  


業務用としてもよく使われているGABAN。一般のスーパーでも取り扱いはありますが、路線はやや高級というところでしょうか。今回は成城石井で購入しました。 
創業は1954年。スパイスの中でもブラックペッパーには並々ならぬこだわりがあるようです。  

風味は全般的に強く、厚みがあります。 
売りにしている黒こしょうは、始めはやや金属的な強い香り、痺れる香りが余韻まで強く残ります。 
黒こしょうに限らず、どのスパイスも香りに一定の厚みがあり、品質のブレは小さいです。  

日本にメジャーに出回っているメーカー(S&B、朝岡スパイス、マスコットなど)と比べても値段は平均的です。手軽に手に入るブランドの中では外れが少なく、お勧めできます。  


C. 大津屋商店 


上野のアメ横にある、スパイスやドライハーブの専門店。創業して60年以上だそうです。インド料理によく使う乾燥豆や茶葉なども充実しています。  

今回の会場、浅草橋ブレッドボードで私はよくカレーを作らせてもらうのですが、その時に使っているスパイスのいくつかはこちらから仕入れています。  

スパイスの風味は、ものによって品質が異なります。 
黒こしょう、カルダモンは、粗雑さはなく悪くないですが、少し枯れたような香りのフェンネル、刺激が先行していて甘い香りが感じられないシナモンは、あまり品質が良いとは言えません。  

ただ、品質を差し置いてもこちらのお店には魅力があります。それは値段。一袋ごとの量が多いのもありますが、スーパーや百貨店で売っているブランドと比較して5〜6倍は安いのです。大量に香辛料を使う予定のある方は、一度試してみてください。   


D. インド現地で購入したスパイス


2016年の末、南インド旅行に行った際に入手して来たスパイス。 
インド南西山間部のムンナールという、スパイス農園や紅茶の産地として有名なところで購入してきました。(店舗名は『Spices Super Market』です。)


スパイスの種類によっては、ランク分けされているものもあり、今回はシナモンがそれに当たります。 

品質は非常に良く、GABANと比べると必ずしも香りが強いとは言えないのですが、上品で厚みがあります。  

黒こしょうでは甘い芳香が、カルダモンでは生姜を思わせるシャープな香りが、シナモンはややリンゴのような甘く分厚い香りが、それぞれ印象的です。 フェンネルの味わいは、他に比べてシャープな辛さと甘い芳香があり、風味の輪郭のクリアさが他のスパイスよりも際立っていました。
     

終わりに 〜スパイスの品質と料理、選び方について〜   

いかがでしたでしょうか。  
いつもの会に比べると、スパイスは直接食べるものではないことと、香りだけでのテイスティングになったことで、少し抽象的で難しい比較だったかもしれません。  

主催の側でも、参加された方の香りに対する表現にうなずかされることも多く、発見のある会でした。  
スパイスのクオリティは、インドはムンナールからしいれてきたものが、香りの厚みと抑制の面で際立っていました。 一般に手に入る物では『GABAN』が、大量に使う場合は、『大津屋商店』のものがコスト面で魅力的です。  


終わりに(その2) 〜スパイスの品質って、料理の出来にどれくらい関わるの?〜

今回は直接検証していませんが、スパイスの品質がどの程度、料理の出来に影響を与えるのかについては、やや未知数な部分があります。  

一スパイス愛好家としては、「パウダーが挽きたてかどうか」という要素の方が、スパイス自体の品質よりも影響が大きく感じます(既に粉になっているものを購入するのと、丸のままのスパイスを家で挽くのとでは、香りに歴然とした差があります)。  

一方で、カフェオレにシナモンスティックを添える場合や、カレーのガラムマサラなどの料理の仕上げに入れるパウダースパイス、炒ったスパイスをそのまま食べるサラダなど、スパイスの風味が料理と直接関わる料理では、スパイス自体の品質も、料理の出来に大きく影響するように感じます。  

ちなみに、飲食店御用達の大量で安価なものを除けば、香辛料の値段はどのブランドでもそれほど大きくは変わりません。 

一度に大量に使うこともない食材ですから、保存性の良い瓶に入った、品質の良いブランドのものを選んでおけば、あまり損することはありません。せっかくですから美味しいスパイスを買いましょう!   


鑑賞会後のビリヤニ、チャイ  


今回は鑑賞会後に、インドで習ったチキンビリヤニと、マサラチャイをお出ししました。  
ビリヤニは、インド米を使ったインドの炊き込み飯で、地方によって様々なスタイルがあります。今回は、日本でも比較的メジャーなハイデラバード式のビリヤニ。  

香り比べでも登場したシナモンやカルダモンが、炊く時に丸のまま入ったり、鶏のマリネに使われたりと大活躍の料理なため、今回のお食事メニューとして採用しました。  

ヨーグルトのサラダ「ライタ」と、ゴマやピーナッツを使ったグレイビー「ミルチーカサーラン」を添えた三点セットのスタイルは現地でもおなじみです。  

マサラチャイは、インド料理研究家であるレヌ・アロラさんのレシピを基にして作った、シナモン、カルダモン、クローブ、ブラックペッパーを使ったチャイマサラを、インド産のスパイスを挽いて調合して使いました。 


今後のイベント開催について  

食べ比べをテーマにした味覚鑑賞会は、月1回を目処に、都内各所、高級品から普段使いの製品まで、様々なテーマで開催中です。その他、グルメをテーマにした様々なイベントを開催中です。   

直近の予定   


2/7(火)   テイスティング専門家のカレー会 Vol.5 (和印ミールス×日本酒)@浅草橋ブレッドボード   

2/18(土)  浜松カレー会(仮名)@幕の内ハウス(浜松)    

2/25or2/26(土or日)  南インド報告会@塩尻    

ご興味ある方はぜひ!

   

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