永木三月のテイスティングログ: ブルーチーズ5種食べ比べ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第39回)

2017年6月17日土曜日

ブルーチーズ5種食べ比べ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第39回)

ブルーチーズ5種食べ比べ!   

5/27(土)浅草橋のシェアハウス『浅草橋ブレッドボード』にて「ブルーチーズ5種食べ比べの会」を開催しました。おいでくださった皆様、どうもありがとうございました。  

エントリーしたのは  
1. 二世古 空(日本) 
2. ロックフォール パピヨン オーガニック(フランス) 
3. スティルトン(イギリス) 
4. ケソ・バルデオン(スペイン) 
5. 貴腐ワイン漬けのフルムダンベール(フランス)
以上の国籍も様々な5品。  

ブルーチーズの味わいの違い、そしてその違いを作っている物は何なのでしょうか? ブルーチーズばかり5品でしたが、非常にバラエティ豊かな食べ比べになりました。   



レビュー  


1.製法と味わいの違い 


ブルーチーズは、その製法に様々なバリエーションがあります。 
具体的には、牛乳の殺菌をどのようにするか、青カビの種類の違い、繁殖の程度、熟成の期間などが異なってくるようです。  

「二世古 空」を除いた全てのチーズが、ヨーロッパで原産地指定などの認証を受けており、その製法には一定のルールが定められています。  

例えば「ロックフォール」は、使用する青カビの種類(とそれを採取する場所)、羊を育てるための飼料、熟成を行う環境などが厳密に定められており、それを遵守しないものは「ロックフォール」と名乗ってはいけない事になっています。歴史あるチーズの多くには、品質の低い偽物がはびこるのを防止するために、こうしたルールが制定されています。  

こうした製法の違いは、チーズの質感(ドライ/ウェット)、香り、青カビの強さなどに表れています。  
製法の点では、今回最も特徴的だったのが、貴腐ワイン(カビを表面に繁殖させた葡萄で作る甘口ワイン)で漬けた「フルムダンベール」。  

ロドルフ・ムニエという著名なチーズ熟成士が作ったチーズで、フランスのチーズ「フルムダンベール」を50日ほど貴腐ワインにつけたものです。貴腐ワイン特有の艶やかな味わいがチーズと合わさり、酒粕のようなコクが感じられるチーズでした。 

青カビの風味が押さえ込まれすぎていて、優れた味わいには今一歩でしたが、他とは違った製法で作った特徴は出ていて、ブルーチーズのバリエーションとしては面白い一品でした。

   

2.原料の違い 


チーズは乳から作られるものですが、動物の種類は様々です。 
今回のラインナップでは 
・フルムダンベール、スティルトン、(情報はありませんが恐らく)二世古→牛乳 
・ロックフォール→羊乳 
・ケソ・デ・バルデオン→牛乳と山羊乳の混合 
となっていました。  

乳が違うと、栄養価や、香り成分が異なり、その差はチーズにも表れます。 
味わいとしては、「ロックフォール」と「ケソ・バルデオン」が特徴的で、主に後味の風味にかなり影響が出ていました。  

ロックフォールは、クリーミーなコクと青カビのスパイシーな辛味のあとに、ぬっと表れる獣臭さが特徴的。 
ケソバルデオンは、ほろほろとしたドライな味わいとビリビリとした辛さがあり、山羊乳の野性味とスパイシーさが余韻に長く残っていました。 

牛乳で作られた物は、他2つに比べれば獣臭さはなく、さらっとした後口でした。

 

3.総評(結局、どれが美味しいのか?)  


結論から言うと、今回頂いた中では、フランス「ロックフォール」、イギリス「スティルトン」、スペイン「ケソ・デ・バルデオン」の3強という印象でした。  

「ロックフォール」は、フランスを代表するブルーチーズ。 鼻にぬっとまとわりつくような青カビの風味があり、いわゆるカビの香りが最も強いタイプです。

また質感のクリーミーさも特徴的です。羊特有の獣臭さが、後味に香ります。デリケートな円やかさと、癖のある刺激が重なり合った面白いチーズです。

製造しているのは『パピヨン社』で、オーガニックの牛乳を使っているとの事でした。(製法さえ守っていればロックフォールと名乗れるので、当然生産者も複数います)  

「スティルトン」は、イギリスを代表するブルーチーズ。「ロックフォール」と同じく、世界三大ブルーチーズの一つです。 燻製のような香りが特徴的で、ドライな質感のブルーチーズ。塩気のニュアンスは「二世古 空」と近いですが、そちらはセミハードチーズのようなソフトな食感と穏やかな香りがあるのに対して、「スティルトン」は舌の上でざらつくような食感と独特のスパイシーな風味があります。 

味わいに気品があり、合わせるお酒は今回のようにワインでも良いのですが、ウイスキーなどドライなお酒も非常に良さそうです。  

「ケソ・デ・バルデオン」は、スペインのブルーチーズ。国を代表するブルーチーズに「ケソ・カブラレス」という非常に癖の強いチーズがあるのですが、そちらを参考にして作ったというブルーチーズ。

キノコなどを思わせるうっそうとした香りが特徴的で、山羊乳の風味も強く出ています。味わいは、「ロックフォール」「スティルトン」に比べれば田舎っぽさがあり、雑味も多いです。山羊乳の香りとスパイシーな余韻が長く残り、他にはない野性味溢れる一品です。   

最後に 



ブルーチーズの食べ比べ、いかがでしたでしょうか? 
同じブルーチーズでもカラーがそれぞれ異なり、合わせたいお酒や料理などもそれぞれ異なっていたのは面白かったです。  

余談ですが、余ったチーズは、後日いろいろなお酒や料理に合わせてみました。 
個人的には「二世古 空」とシラス入りのオイルパスタ、「ケソ・デ・バルデオン」と日本酒の熱燗、「ロックフォール」とアルザスのピノグリ(甘口白ワイン)が、とても好相性で面白かったです。
 

また、会の中では、ワイン案内人のMinamiさんに選んでいただいた、ドイツのリースリング(甘口の白ワイン)を合わせました。Minamiさんありがとうございました。
  
ブルーチーズには貴腐ワインを合わせるのが定番なのですが、非常に高額ということで、同系統のものとして、ドイツのリースリングをセレクトしてくれました。
塩気の多い食べ比べだったので、良いリフレッシュの役割も果たしてくれました。お楽しみいただけていれば嬉しいです。

  

今回の賄い 

今回は会後のお食事として、鶏ガラでじっくり取ったスープで作ったリゾットをお出ししました。
  
ブルーチーズの会だったこともあり、こちらはさらっと食べて頂ける味にしました。「ペコリーノトスカーナ」という羊乳を使ったチーズを味の決め手として加えています。  

具材はアワビ茸のバターソテーとグリンピース。グリンピースは、千葉や都内のマルシェでお馴染み、私の一推しの農園さんでもある有機農園『眞嶋農園』さんのものを使っています。 旬の味わいを楽しんで頂けていれば嬉しいです。  

今後のイベント開催について 


食べ比べをテーマにした味覚鑑賞会は、月1回を目処に、都内各所、高級品から普段使いの製品まで、様々なテーマで開催中です。 
その他、グルメをテーマにした様々なイベントも常時開催しています。   

直近では  
6/24 (土)19時〜 梅干し食べ比べの会@浅草橋ブレッドボード(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第40回)  
を予定しています。

現在参加受付中です(イベントページはこちら。ご興味ある方はぜひ!  

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