永木三月のテイスティングログ: 日仏発酵バター食べ比べ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第36回)

2016年10月13日木曜日

日仏発酵バター食べ比べ!(「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」第36回)

 
日仏発酵バター食べ比べ! 

9/22(木)、浅草橋ブレッドボードにて「テイスティング専門家の味覚鑑賞会」を開催しました。おいでくださった皆様、どうもありがとうございました。 

今回のテーマは「国産とフランス産のバター食べ比べ」です。こだわりのフランスパン屋で働く知人からのリクエストで決定したテーマです。

今回エントリーしたのは  
 1. よつ葉  
 2. CALPIS 
●3. 町村農場 
●4. イジニーバター 
★5.レスキュールバター 
★6.エシレ 

の6ブランド。(★が特に優れた品、●が次点です。) 
味は全て無塩で統一しました。 

 


レビュー

1.日仏の味の傾向 水っぽさと野性味 

日仏のバターを比較した時に最初に目につくのは、風味の濃さです。 
端的に言って国産はフランス産に比べて水っぽく、それは製菓のプロフェッショナルに評価されているというカルピスのバターにも、町村農場の発酵バターも同様でした。 

フランス産の中では、4品目のイジニーバターが特に風味が濃く、獣のような強い香りと、少し塩味を感じるほどの濃厚さがあり、印象的でした。 

今回はフランス産のものが名だたるものばかりだったので、一概にフランス産が優れているとは言えませんが、国産で風味の高い発酵バターは、入手がかなり難しいようです。 

2品目のカルピスバターや、3品目の町村農場のバターなど、味の作り自体は繊細なものもあり、原料の差が大きいように思えます。 


2.バランスの良い『レスキュール』、コクのリッチな『エシレ』  

今回食べたバターで1、2を争ったのが、フランスの『レスキュール』と『エシレ』でした。 

レスキュールもエシレも共に、フランスでAOC(原産地呼称統制)を取得しているバターです。(AOC=製造過程と品質評価を基準に、国から授けられる特別な認証) 

どちらも日本産に比べて濃密なコクがあったのは同じですが、その味わいの方向性に違いがありました。 

レスキュールの味わいの美点は、素材に寄り添った素直さと、隙のなさにあります。香り、口当たり、コクの広がり、余韻の長さなど、どれも高水準でした。 

発酵感は弱く、癖のなさは少し気になる所です。 ではエシレはどうでしょうか。レスキュールに比べて日本国内でもメジャーな発酵バターなので、食べた事のある方も多いかと思います。 

エシレの味わいの美点は、コクのリッチさです。レスキュールが素材に寄り添った素直さを持っているのに対し、エシレはコクの厚みと香りに焦点を絞った人工的な作りを感じます。 

最も印象的なのは、口当たりの凝縮感。木桶を使った製法からか、ウッディな香りが仄かに漂い、イジニーとは違った香りの強さがあります。 
一方でややコク一辺倒なこともあり、序破急の綺麗さでは、レスキュールに軍配が上がります。 

値段も近いので、単純に品質では甲乙のつけ難い二品です。 
発酵感をあまり求めない人にはバランス良く上質なレスキュールを、発酵バターならではの美味しさを求める人に、加えて加熱調理には、発酵バターならではの風味の強いエシレをお勧めします。 


終わりに

いかがでしたでしょうか。 
国産の発酵バターは、そもそも無塩のラインナップが非常に限られていたことからも、料理に使うものと見なされてないことが伺えます。(お菓子作りなど、無塩でなくてはならないシチュエーションは多いのですが) 

日本に美味しい発酵バターがないわけではないのですが、ほとんどが有塩で、テーブルバターとしての使用を前提としているようです。 

何より今回比較してみて一番衝撃だったのは、その風味の濃厚さの違いです。その差は(多少オーバーな表現になりますが)市販されているメジャーな牛乳と、牧場で飲む温かい甘みのある牛乳の違いを思わせます。 

フランスは酪農大国で、一人当たりの乳製品消費量も日本の倍程です。スーパーにも、日本とは比較にならないほどの種類の乳製品があるそうで、各の生活にあった形ではあっても、多くの人が乳製品を日常的に食している様が伺えます。(参照) 

一方で日本の売場を見れば、低温殺菌牛乳さえおいてないところも多く、バターの種類も数種類。そもそもの選択肢が少なく、メジャーに販売されている製品は上質とは言えません。 
日本とフランスのバターの味わいの違いは、こうした生活への根ざし方の違いから生じているのではないでしょうか。



今回の料理

今回は鑑賞会終了後に食事を少しお出ししました。
メニューは、発酵バター鑑賞会ということで、脂の後に少しリフレッシュにもなる酸味の利いた「トマトのガスパチョ」と、発酵バターをたっぷり使った「三種の茸のニョッキ」 でした。

調理に使った中では、エシレバターが加熱すると更に香り高く、料理していてとても心地の良いひと時でした。
お楽しみ頂けていれば幸いです。

今後のイベント開催について

食べ比べをテーマにした味覚鑑賞会は、毎月2回程度、都内各所、高級品から普段使いの製品まで、様々なテーマで開催中です。その他、グルメをテーマにした様々なイベントを開催中です。 

直近の予定

10/22(土)18:00~ (「ワインのススメ」さんとのコラボ) ワイン×料理 地方食探究の会 ~イタリア ラツィオ州編~ @Okatteにしおぎ(イベントページはこちら) 

先月から始動した「地方食探究の会」の第2回です。「ワインのススメ」さんとのコラボ企画。ローカルな料理とワインを合わせて楽しんでみようというイベントです。今回のテーマは、イタリアの首都ローマを州都に持つラツィオ州。がっつりローカルな料理をお届けします。ご興味ある方はぜひ!

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