永木三月のテイスティングログ: 和梨会! 〜市川の農園VS高級フルーツ専門店〜

2015年10月6日火曜日

和梨会! 〜市川の農園VS高級フルーツ専門店〜


9/27(日)夜、シェアハウス「浅草橋ブレッドボード」にて、食べ比べをテーマにした会、おいしいもの味覚鑑賞会を開催しました。今回で25回目の開催になります。参加してくださった皆さま、どうもありがとうございました。  
会を主催している永木三月です。

今回のテーマは「旬の和梨」です。市川の農園から高級フルーツ専門店まで、6(+1)つの梨を揃えました。いつもと少し趣向を変えて、品種とお店両方を食べ比べられる会にしました。レビューを、会の模様と合わせてお届けします。


〈目次〉(★=格別美味、◯=次点。) 

0.『肉のハナマサ』の梨(品種不明)
◯1.市川『丸庄園』の「あきづき」
★2.『新宿高野』の「あきづき」(約600円)
◯3.『サンフルーツ』の「あきづき」(約500円)
◯4.市川『角エ衛門』の「新高」(約500円)
5.市川『丸庄園』の「かおり」(約600円)
6.『京橋千疋屋』の「二十世紀」(約1000円)


当日は、17時から鑑賞会を開始しました。
この記事は、会で実際に頂いたものを、レビュー形式でまとめたものになります。
評価はお勧め度の特に高いものを「★」で、次点を「◯」で印をつけています。
ここでの評価は、永木三月個人の責任でつけております。 以上の点をご了承ください。



レビュー

0.『肉のハナマサ』の梨(品種不明)



まずは会場近くの業務用スーパー『肉のハナマサ』の梨。品種は記載がありませんでしたが、食べ比べのたたき台として最初にいただきました。

最初の一口ではジューシーさを感じますが、二口目以降の味の薄さ、酸味のえぐさが気になります。量販店の平均かどうかはわかりませんが、梨らしい旨味には乏しい味です。


1. 市川『丸庄園』の「あきづき」


千葉県の市川は大町梨街道」の農園『丸庄園』の、あきづき。ここから3品は、それぞれ別の場所で購入したあきづきを食べ比べています。

「あきづき」は、9月下旬頃から収穫が始まる品種で、「豊水」と「新高」を掛け合わせたものに「幸水」を交配させてできたものだそうです。平成13年生まれと比較的新しい品種です。高級フルーツ専門店でも1つ500円程度と、比較的手頃な値段で入手できました。

最初のあきづきは、梨の農園や直売所が立ち並ぶ大町梨街道の一店『丸庄園』で購入したものです。シャキッとキレの良い食感が印象的で、最初に頂いた梨と比べてしっかりと甘いジュースがあります。


 2.『新宿高野』の「あきづき」(600円程度)


次は、今年で創業130周年を迎える『新宿高野』です。
果物の販売だけではなく、フルーツパーラーやジュースバーなども展開しており、新宿以外にも方々に店舗があります。今回は船橋東武の店舗で購入しました。

こちらのあきづきは、甘さ主体の味わいであることは『丸庄園』のものと変わりませんが、かなり抑えが利いていて穏やかです。ジューシーな味わいにも透明感が感じられ、全体に上品さをたたえています。

農園直売のフレッシュな味わいへの驚きとは別種の、果物を選び抜くお店の姿勢に対する驚きを覚えます。専門店ならではのクオリティを感じさせる一品でした。


3.『サンフルーツ』の「あきづき」(500円程度)


(画面右下)

六本木のミッドタウンや三越などに店舗を持つ、高級フルーツ専門店『サン・フルーツ』。大正創業の老舗です。今回は日本橋の三越で購入しました。

こちらのあきづきは前2つと路線がかなり違い、果肉のがっしりとした食感と、フレッシュな酸味が特徴的です。

こうした味わいの差には、専門店なりの差別化があるのだろうと感じさせられます。この「あきづき」は普通のレベルでおいしいですが、他のフルーツでのチョイスがどのようなものなのか、興味が湧く一品でもありました。


4.市川『角エ衛門の梨』の「新高」(500円)



お取り寄せの梨に定評のある市川の梨農園。今回は直売所で購入しています。傷や形が原因でお店におろせなかったものを詰め合わせて、一袋1000円での販売。味には影響がないとのことだったので、かなり大きなサイズの新高が2つ入ったものを購入しました。

ちなみに「新高」という品種は9月下旬から10月が旬と、楽しめる時期は他の梨に比べて遅めです。サイズは非常に大きく、他の品種と味わいはかなり異なります。

食感には、ぽすっと音が聞こえるような独特のスポンジ感があり、サイズは大きいですが大味ではありません。あきづきに比べれば、少し酸味が前に出ています。他の新高を食べた訳ではありませんが、この品種の持ち味がストレートに発揮された、美味しい梨だったと思います。


5.市川『丸庄園』の「かおり」(600円)



先ほど頂いた「あきづき」に続き、丸庄園で作られた「かおり」という品種です。

育てるのが難しいらしく、スーパーなどに出回ることはほとんどありません。基本的に大玉で、値段は他の品種に比べて格段に高いです。

私は初めてこの梨を食べましたが、一番特徴的なのは香りの華やかさだと思います。他の梨に感じるような、ほのかな渋い香りがなく、膨らみがある甘い香りです。和梨よりは、洋梨やりんごに近い印象を覚えます。

いくつかのあきづきで感じたような、食感のキレ、甘みの伸びなどは感じられず、味わいはまだまだ充実の余地がありそうに思えます。先ほどの新高とは反対に、品種の持ち味を引き出し切れていない印象でした。


6.『京橋千疋屋』の「二十世紀」(1000円程度)



最後は『京橋千疋屋』で購入した「二十世紀」
ここまで紹介してきた品種と異なり、主な産地は鳥取県や長野県です。
二十世紀における代表的な品種になってほしいという願いが込められた名前だそうです。

購入した店舗『京橋千疋屋』についても紹介しておきましょう。
現在「千疋屋」には、『京橋千疋屋』『銀座千疋屋』『千疋屋総本店』と3つのお店があり、京橋と銀座のお店は、総本店からの暖簾分けです。150年以上前から、「水菓子といえば千疋屋」の地位を守り続けており、徳川家の御用商人だったこともあります。

今回購入した二十世紀梨は、贈答品で名高い千疋屋なだけあり、色艶、形などに玉のような美しさがあります。 味わいは、柑橘のような明るい酸味が特徴的で、果肉にはしっかりとした歯ごたえがあります。甘いジュースがあった他の品種とカラーは異なります。

丸庄園の「かおり」同様、こちらも品種の持ち味を活かし切れているかについては疑問が残りました。一口目は、酸味がフレッシュで良いのですが、そこからの伸び、味の膨らみに欠けます。一つ1000円超と高額だったこともあり、他の梨に比べると見劣りする感が否めません。



梨の美味しさと、「素材を食べ比べる」ということ

洋梨と違って、和梨は製菓の素材に使われることが少ないようです。和梨というと瑞々しい食感がその大きな魅力の一つですが、味わいはかなりあっさりしているため、コンポートなどにしても力を発揮しないのでしょう。案外、家で食べる機会がない方も多いのではないでしょうか。

農園まで出かけるのは大変ですが、専門店は百貨店などに数多く出店しているので、季節の梨を一度買い求めて見るのをお勧めします。同じ梨、同じ品種と言えど、果物は店のコンセプトに沿って選び抜かれているため、単にフレッシュな果物を食べる以上の面白さがあります。

素材の食べ比べは今回が初でしたが、梨一つ取っても、作り手や選び手の考え方が如実に表れていて、非常に食べ比べ甲斐のある会になりました。一部のレストランでは、作る料理を想定して、農家の方にそれに合う素材作りをお願いすることもあると聞きますから、それも当然のことなのかもしれません。別の素材でまた開催できたらと思います。



今回のレシピ  梨と水菜のサラダ

最後に、梨の食感を活かした、簡単なサラダのレシピを紹介します。
梨を大量にもらって余らせてしまっている方、買ってみた梨の味が今ひとつで困っている方、ぜひ試してみてください。



材料(つくりやすい量)
水菜2把、和梨1/2個、バルサミコドレッシング、好みのナッツ

1. バルサミコドレッシングを作ります。バルサミコ酢に塩胡椒ひとつまみを入れてよく混ぜ合わせます。塩が溶けたら、酢と同量のオリーブオイルを入れて、とろんとするまで泡立て器で混ぜます。

2. 水菜は食べやすい大きさに切り、冷水にさらして20分ほど置いてから、よく水気を切って冷蔵庫に入れておきます。

3. 梨は水菜と同じくらいの長さで、千切りにしておきます。
時間が立つと果汁が染み出てしまうので、食べる直前の方が良いでしょう。

4. ナッツは好みのサイズに刻んでおきます。

5. 梨と水菜、ナッツをボウルに入れます。ドレッシングをボウルの側面を伝わせて入れて、全体をやさしく和えます。
ソースが分離していたら、再度泡立て器で混ぜてから入れましょう。

梨の食感を活かしたシンプルなサラダです。刻んだナッツを入れることで、苦味とコクが加わり、メリハリが出ます。今回はヘーゼルナッツを入れて作りました。

ドレッシングは控えめに入れるのが大事です。底にソースが残る場合は、ソースが多すぎます。ドレッシングは文字通り野菜にドレスさせる(着せる)ものなので、素材の表面に満遍なく行き渡るくらいの量を心がけましょう。

バルサミコ酢で作るソースは、レモン汁を少し加えても美味しいです。



次回の予定

「おいしいもの味覚鑑賞会」は月一回を目安に開催しています。 これを見て興味をもった方、今回は都合が合わなかった方、普段から食べるのが好きな方、いつもはコンビニで済ませてしまう方、どんな方でも大歓迎です。おいしいものを食べて、一緒に語らってみませんか? 

このサイトでは、美味しいレシピ、お店の紹介や食べ比べの実践など、「テイスティング」をテーマに記事をお届けしています。そちらもよろしければ見ていってください。それではまた!

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